SSブログ

●「舟を編む」三浦しをん [読書レポート]

「舟を編む」三浦しをん
辞書編纂の魅力に引き込まれた人々の物語


舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: Kindle版


読了日:2023.4.3
分 類:長編
ページ:259P
価 格:1500円
発行日:2011年9月発行
出版社:光文社
初 出:CLASSY.(光文社刊)2009年11月号~2011年7月号
評 定:★★★★★


●作品データ●
---------------
主人公 : (荒木 公平、)馬締 光也、西岡 正志、岸部 みどり
語り口 : 三人称(である調)
ジャンル: 長編
対 象 : 一般向け
雰囲気 : 現代、リアル
---------------

【100字紹介】
辞書は言葉の海を渡る舟。そんな想いをのせた「大渡海」を編む。 お金も時間もかかるものの、出版社の屋台骨になれる辞書作りに関わる人々の、 十五年越しの物語を複数の視点から紡ぐ人気作。2012年本屋大賞受賞


10年ちょっと前、この作品が流行ったころに、周りでも評判でした。
でも「舟?え?職人さんの話?」と思い、何となくそのままになっていました。
まさか、辞書つくりの話とは。何故、舟?となりましたが、
それは冒頭の方のエピソードで出てきます。

言葉の海を渡る辞書「大渡海」の制作と
その周りの人々の紡ぐ物語だったのですね…。

時間的には制作の始まって少し経った時期と、終盤から完成時期の2つに分けられ、
その中でも視点でもう少し細かくパートが分かれます。
主人公というか、視点は当初は「大渡海」立ち上げメンバーの荒木さんで、
自身の定年後の辞書編集部の行く末を案じつつ、
のちに主要メンバーとなる馬締光也を見出すところ。これがプロローグですね。
本編は、前半は馬締が中心、後半は岸部みどりが中心ですが、
間に辞書編集部を去っていく西岡が入ることで、より深みが出ている気がします。
また、最後はやんわりと馬締に戻ってきます。
視点にはならなかった松本先生も、その人生に思いを馳せざるを得ない「手紙」を
最後に繰り出してきます。

馬締、西岡、岸部みどりはキャラの色合いも立ち位置もだいぶ違いますが、
それぞれがそれぞれの物語を、心を揺らしながら生きている感じがよく出ていました。
リアルとしては、馬締タイプより岸部みどり寄りの人が多そうです。
西岡は面白いですね。本人の視点を読むのも面白かったですが、
外から見るとこう見えるんだなーというのが、とてもうまいと感じました。

それにしても…物語としてはこうならざるを得なかったと思いますが、
それでも、どうしても、松本先生には「大渡海」の祝賀会でも
用例採集していてほしかったな、と思います。
まあ、あの世でやるそうですが。
あんなお手紙を遺せるような人になりたいものですね。

「みなさんの、『大渡海』の、末永く幸せな航海を祈ります。」

気に入った一文として、こちらと荒木さんの説明とどちらを取るか、
物凄く迷いました。が、これは最後まで読んできた人だけが
しみじみと味わえる文章だと思うと、単独で掲げるのはやめようかなと。

この物語はあくまで、辞書作り部分が中心になっていたので、
視点にならなかった人々の人生までは掘り下げはしないのですが、
松本先生の人生も少し、気になりました。
何だろう、若い岸部の物語はぼーっと眺められるのですが、
荒木さんや松本先生の生き方が気になってしまいます。
そういうところで、自分が年を取ったのかな、と思ったりする今日この頃です。

本書は、映画化、アニメ化をされたことを今回知りました。
しかもアニメ、菜の花の大ファンの声優さん…!
リアルタイムで見たかったです…。
逃してしまって残念。でも各回の「予告編」動画は
今でも公式サイトで公開されていたので、それでもそこそこ満足しました。

面白い物語だったと思います。


菜の花の一押しキャラ…松本 先生

「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」(荒木 公平)


---------------
文章・展開 :★★★★
簡 潔 性 :★★★★
学 術 性 :★★★★
独 自 性 :★★★★★
読 後 感 :★★★★
---------------
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。