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●「殺戮にいたる病」我孫子 武丸 [読書レポート]

「殺戮にいたる病」我孫子 武丸
ミステリファンは必読、叙述トリックの傑作


殺戮にいたる病 (講談社文庫)

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

  • 作者: 我孫子 武丸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/11/14
  • メディア: 文庫


読了日:2014.1.4
分 類:長編
ページ:324P
価 格:524円
発行日:1992年9月、講談社、1994年8月、講談社ノベルス、1996年11月発行
出版社:講談社文庫
評 定:★★★


●作品データ●
----------------------------
主人公 : 蒲生 稔、蒲生 雅子、樋口 武雄
語り口 : 3人称
ジャンル: ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : エロ&グロ
結 末 : 解決
カバーデザイン : 辰巳 四郎
デザイン : 菊地 信義
---------------------------

【100字紹介】
「真実の愛」を求めた男は、サイコキラーとして
東京の繁華街で次々と若い女性を狙った猟奇殺人事件を引き起こす。
犯人、犯人の家族、そして被害者の知人で定年した元刑事の3人の視点で追う、
事件の先にあるものは…



叙述トリックの最高峰、的な、ミステリ作家のオススメ書評を見て、
いつか読もうと思っていた1冊でした。
そして結論から言えば、間違いない傑作。


東京の繁華街で次々と起こる、若い女性を狙った猟奇的殺人事件。
死んだ女性に「真実の愛」を感じるサイコキラー・蒲生稔の軌跡を辿りつつ、
蒲生稔に加えて蒲生の家族・蒲生雅子、
被害者と親しかった引退した元刑事・樋口という3つの視点から、
時間を追って語られる事件の経過で構成されています。

内容は、エロティック&グロテスクです。
犯人の蒲生稔の行動も、そして考え方も。
「真実の愛」のため、次々と女性をホテルに誘って絞殺、
遺体を愛撫した後に損壊して一部持ち帰る…、
もう、何か色々ダメです。
歴代ミステリの犯人の中でも、トップクラスにどうしようもないキャラです。
まあ殺した時点でもちろん、アウトですが。
自分の息子が犯人なのではないか、と葛藤し、
そして隠蔽を考えている蒲生雅子の方も人としてダメダメです。
でも、その心理の描写が巧みなので、ひどくリアリティはあります。
それがよりグロテスクに感じてしまいます。

そして、特筆すべきラスト。
確かにミステリとしては一流です。
沢山の人が途中、端々で違和感を覚えつつも綺麗に騙され、
世界をひっくり返す最後の台詞に驚愕し、
そしてすとんと納得したことでしょう。
何が凄いって、たぶん多くのミステリファンに、
読み返させることもなく「そうだったのか…」と
納得させてしまうであろうところです。
もちろん、もう1周、読みたくなるのは間違いなさそうですが。

でも描写が苦手かも…。
事件の性質上、仕方ないですね。
しかし、これをもっと別の事件に置き換えられるか?と
ちょっと考えてみたのですが、難しそうです。
こういう事情で、こういう事件だからこそ、こういう作品になった。
そういう必然的なものを感じました。
それに、異常殺人者の描写も秀逸だと思います。
著者自身、ひとりやふたりは殺っちゃってるんじゃないの?くらいに。
蒲生雅子の心理描写については上述していますが、
他のキャラも個々に、様々な思惑を上手く描いています。
完全な善人は見当たらず、皆、生身の人間らしさを持っているのです。

その意味では、ネタバレしたからといって、
この作品の凄さが消えてなくなるということはないでしょう。
まあ、綺麗な巴投げが決まったー!的な最初の一読の気分は
難しいとは思いますけれども。


というわけで、本作は万人にはオススメできませんが、
それでもミステリファンなら、おさえてはおきたいところです。


---------------------------------
文章・描写 :★★★★
展開・結末 :★★★★★
キャラクタ :★★★★★
独 自 性 :★★★★★
読 後 感 :★★
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菜の花の一押しキャラ…特になし

「え?…ああ。そう、そうです」(蒲生 稔)

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