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●「楽園(下)」宮部 みゆき [読書レポート]

「楽園(下)」宮部 みゆき
「模倣犯」から9年。親と子の、事件の物語


楽園 下

楽園 下

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本

読了日:2013.10.26
分 類:長編
ページ:361P
価 格:1619円
発行日:2007年8月発行
出版社:文藝春秋
評 定:★★★+


●作品データ●
----------------------------
主人公 : 前畑 滋子
語り口 : 3人称
ジャンル: ミステリ
対 象 : 一般向け
雰囲気 : じっくり
結 末 : 解決
装 丁 : 鈴木 正道
カバー写真 : 小山 泰介
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【100字紹介】
少女殺害事件の裏には、何か裏がある…
前畑滋子は、表に出た事件の更に向こうへ。
子を想う親の愛、親を慕う子の想い。
ときにすれ違い、どうしたらよいか分からなくなる袋小路。
皆それぞれの、思い悩んだ結果の物語。



上下巻の後半です。
萩谷敏子と土井崎誠子という2人のクライアントを抱え、
「土井崎茜殺害事件」と、「あおぞら会」を調べていた前畑滋子。
徐々に明らかになる茜のこと、そして新たに起こる拉致事件と、
辿り着いた真相が明かされます。


最後まで読んでみると分かるのは、帯にもある通りこの物語は、
「子を想う親の愛の形を問いかける物語」なのですね。
そして逆も。
可愛がられる妹、嫉妬する姉。
それは親の愛をうまく受け止められない、
それでも深層では狂おしいまでに親を慕う子どもの愛。
すれ違いの積み重ねと、ちょっとしたきっかけ。
上巻から徐々に登場していた「断章」の正体は第2の茜、でした。
上巻のうちにすでに「佐藤昌子」の名前は出てくるものの、
古い記憶の断片なのかと思っていました。
そうか、繰り返される物語が同時進行していたのか、と。
うーん、著者に騙されまい、と一生懸命、
誰の記憶の断片なのか、と思っていたのに、
まさにストレートに別の物語だったとは。
もっと素直に読まなければいけませんね。

もちろん、親子愛だけではありません。
誠子の方は、親子愛も絡むものの、
達ちゃんとの関係も難しいものです。
滋子夫妻の安定感があるせいか、余計にその不安定さが際立ちます。
(というか、前畑夫妻は子どもこそいないけれど、
 夫婦の関係としては何とも羨ましい。)
あんなに良い人なのに、人の心とはままならないもの。


登場人物たちはそれぞれの考えで思い悩み、その結果の物語ですが、
それぞれから出された答えに、ベストの正解はないかもしれず、
とても難しい問題なのですが、
それを考えるよいきっかけになるかもしれない作品でした。
しかし、もしも子どもがろくでなしに育ってしまったら…、
本当、どうしたらよいのでしょうね。
そうならないように、育てている人が大半なのでしょうけれども、
子どもというのは、親の思うようには育ってくれないものですから。


事件自体は何ともすっきりしない、悲劇の物語でしたが、
著者は最後の最後に何とか希望をおいてくれました。
萩谷敏子にだけは、今からでも幸せになって欲しいものですね。


そういえば、このタイトルはどうして楽園なのでしょう…。
ちょっと分かりませんでした。
読み取れなかった、というのが「まだまだ読者レベルが低いぞ!」と
言われているようで、ちょっと悔しいところです。


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文章・描写 :★★★
展開・結末 :★★★
キャラクタ :★★★★
独 自 性 :★★★+
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…萩谷 敏子


「優しい旦那様で、わたしは幸せです。拝んじゃう」(前畑 滋子)
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